海外の現実から、社会問題の本質を学ぶ。~SDGs型オンライン留学Vol.1

コロナ禍で海外渡航が制限される状況ではありますが、海外の言語や社会情勢に触れる機会は大事です。そこで本学は2021年3月8日~12日の5日間、【オンライン留学】を実施しました。このオンライン留学で主題と定めたのが【SDGs】です。
そのプログラムの一つとして、フィリピンで社会支援活動を行う大坂俊介氏を招き、貧困、スラム、孤児院などの社会問題について講演して頂きました。

講師のオオサカ氏。

講師の大坂俊介氏。

学生たちはオンラインで受講。

学生たちはオンラインで受講。

大坂氏が最初に取り上げたのは【孤児院】です。
「フィリピンの孤児院は、一つの街に10ヶ所以上も存在しています。子どもが孤児院に送られる最大の要因は、親の虐待です。無職の親が多くて生活が苦しく、ストレスが溜まる。子供がそのはけ口になってしまうわけです。また親が子に仕事を強要するため、家にいては子が満足に勉強できないというケースもあります」
と大坂氏は言います。孤児院に国の援助はほとんどなく、運営費は企業や富裕層からの献金で賄います。その資金を使い、子どもたちに三食と住居を提供し、勉強やマナーも教えて、自立できるようになるまで育てるのです。
「親の無職と孤児院の多さは密接に関連しています。なぜそんな状況にあるのか、学生のみなさんにぜひ考えていただきたいと思います」

住込み型孤児院の様子。広々とした空間に1人に一つベッドが用意されています。

住込み型孤児院の様子。広々とした空間に1人に一つベッドが用意されています。

孤児院で子どもたちの世話をするシスターのアテ・ナリさん。「本当の家族のように接しながら子どもたちをケアしています」

孤児院で子どもたちの世話をするシスターのアテ・ナリさん。「本当の家族のように接しながら子どもたちをケアしています」

次のトピックスは【ゴミ山】について。
「フィリピンでは栄えた都市でも、中心街から車で10分走ると、ゴミ山が見つかります。というのも、焼却や埋立てでゴミを処分するというシステムが構築されていないからです」
ゴミ山の中には、工事現場の廃材や金属片、工場から出た化学薬品、病院からの医療廃棄物など雑多な物が含まれます。中には、売ればお金になる物もあるため、貧しい人々が集まってきます。そしてゴミ山の周りにスラムが形成されるのだそうです。
「化学薬品などの不純物が土壌や水に溶け出し、健康に悪影響を及ぼすこともあります。危険だしイメージも悪いので、自治体はゴミ山をなんとかしたいと思っています。それでもゴミ山がなくなるとお金にならない、とスラムの人々は離れようとしません。簡単に行かない問題なのです」

ゴミ山。緑に覆われた部分も、下はゴミが堆積しています。

ゴミ山。緑に覆われた部分も、下はゴミが堆積しています。

工場からの廃ドラム缶。中にわずかに有害な化学薬品が残留している場合もあります。

工場からの廃ドラム缶。中にわずかに有害な化学薬品が残留している場合もあります。

ゴミ山で40年近く暮らす女性。「プラスチックボトルとか金属とかをゴミから拾えば、お金に換えられる。ゴミ山がなくなると困ります」

ゴミ山で40年近く暮らす女性。「プラスチックボトルとか金属とかをゴミから拾えば、お金に換えられる。ゴミ山がなくなると困ります」

ゴミ山を管理する自治体の職員。「みんな"自分のゴミはそのへんに捨てればいい"と思っているから、ゴミ山がどんどんできてしまうのです」

ゴミ山を管理する自治体の職員。「みんな"自分のゴミはそのへんに捨てればいい"と思っているから、ゴミ山がどんどんできてしまうのです」

最後は【スラム】についての講義です。
経済成長率6%以上で発展しているフィリピンですが、比例するようにスラム街も増加しています。1ヶ月4000円以下で暮らす極貧層世帯は、国全体の25%にも及ぶ、とのこと。
「スラムの住居には玄関がなく、電気・ガスもありません。キッチンもトイレもシャワーも室内にはなく、シャワーは水しかでません。収入が少ないため、小さな子どもも働かされます。三食きちんと摂れないので、ガリガリです。また親が子の持ち物を勝手に売るなどの行為も頻繁。誰しも自分を守ることで精一杯なのです」
一方、富裕層と呼ばれる世帯は全体の約2割。この2割で国の富の大半を独占しており、しかも格差は広がるばかりです。
「スラム拡大の背景には所得格差があります。どうすれば所得格差を解消できるのか、という問題意識を、ぜひ持ってください」

スラムの住居。住人が勝手に建てた住まいなので、玄関はなく、壁も天井もボロボロ。台風が来るとすぐ倒れてしまいます。

スラムの住居。住人が勝手に建てた住まいなので、玄関はなく、壁も天井もボロボロ。台風が来るとすぐ倒れてしまいます。

生活に水は欠かせないため、スラムの多くは川に沿って発生します。川に生活排水や排泄物をそのまま流したりするので、不快な匂いがします。

生活に水は欠かせないため、スラムの多くは川に沿って発生します。川に生活排水や排泄物をそのまま流したりするので、不快な匂いがします。

洗濯をするのも家の外。シャワーも同じく家の外で浴びます。

洗濯をするのも家の外。シャワーも同じく家の外で浴びます。

スラムで暮らすレキシーさん。「隙間だらけで、川の不快な匂いが入ってくるし、蚊もたくさんいるので、よく眠れません」

スラムで暮らすレキシーさん。「隙間だらけで、川の不快な匂いが入ってくるし、蚊もたくさんいるので、よく眠れません」

モニターの向こう側に広がる世界の現実を目の当たりにした学生たちは、衝撃を受けつつも、それぞれが問題意識を新たにしたようでした。

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