公開シンポジウム/AI、IoT…最先端技術が創り出す、人間中心の超スマート社会「Society5.0」

Society5.0とは何か。私たちの暮らしはどう変わるのか。

広島工業大学は毎年、「科学技術と日常生活の対話」という視点で、地域の方々に最先端のテクノロジーを体験する機会を提供しようと公開シンポジウムを開催しています。
第33回目は、2019年12月7日(土)に広島国際会議場で開催されました。

今回のテーマは【Society5.0時代の波に乗ろう ~超スマート社会を迎える一人ひとりの課題~】。Society5.0とは何か。暮らしは、地域は、将来はどうなるのか。そんな好奇心に溢れた方々が集まった会場は、熱気で満たされていました。

シンポジウムに先立ち、本学学長・長坂康史が、「Society5.0が目指すのは"人間中心の社会"です。どれほどワクワクする日常や社会が生まれるのか。一緒に学びましょう」と挨拶しました。

12月7日(土)にシンポジウムが開催された広島国際会議場。

12月7日(土)にシンポジウムが開催された広島国際会議場。

約200人が出席。高校生、年配の方、現役のビジネスパーソンなどいろんな方々が来場されました。

約200人が出席。高校生、年配の方、現役のビジネスパーソンなどいろんな方々が来場されました。

「Society5.0を実現するため、私たち一人ひとりが抱える課題についても理解を深めてください」と本学長坂学長。

「Society5.0を実現するため、私たち一人ひとりが抱える課題についても理解を深めてください」と本学長坂学長。

第1部は、様々な分野・業界でSociety5.0実現に取り組むスペシャリスト4人にご講演いただきました。

サイバー空間とフィジカル空間の融合で、社会を豊かに。
講演1. Society5.0の実現に向けた科学技術・イノベーション政策
内閣府 政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付 参事官
永井 岳彦 氏

「AI、IoTといった最新の技術がもたらす変化は、産業分野に限定したものではありません。私たちの生活、地域、行政など、社会の有り様を大きく変える力となるでしょう。日本は今、先端技術によって新しいサービスや価値が生み出され、社会で暮らす全ての人々に豊かさをもたらすSociety5.0の実現を目指し、様々な開発・計画を推進しています」とお立場をご説明されました。

その上で、「サイバー(仮想)空間とフィジカル(現実)空間の高度な融合によって、経済発展と社会課題の解決を両立させるSociety5.0を構築するには、多様なテクノロジーを必要とします。中でもAIは基盤技術の一つ。日本は、特に『健康・医療』『農業』『国土強靭化』『交通インフラ・物流』『地方創生』の重点5分野でAI実装を進めています」と各種政策をご紹介いただきました。

「分野横断・産学官協力、国際連携といった枠組みを活用しながら、日本ならではのイノベーションを起こしたい。それらがSociety5.0の原動力となるでしょう」と、期待を述べられました。

内閣府・政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付 参事官の永井岳彦氏。

内閣府・政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付 参事官の永井岳彦氏。

「イノベーションを起こすには、基礎研究から社会実装・ビジネス構築まで一気通貫で進める体制づくりが大事」と語る永井氏。

「イノベーションを起こすには、基礎研究から社会実装・ビジネス構築まで一気通貫で進める体制づくりが大事」と語る永井氏。

デジタルトランスフォーメーションが、社会のあちこちで始まっている。
講演2. Society5.0を実現するDX ~デジタルトランスフォーメーション最前線~
富士通株式会社 グローバルマーケティング本部 エバンジェリスト推進室
シニアエバンジェリスト
及川 洋光 氏

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、データとデジタル技術を駆使し、社会や産業に大変革をもたらすこと。そうした動きが既に始まっていることを、各種デモンストレーションを交えてご紹介いただきました。

その一つが『デジタルプレイス』。VR(仮想現実)・AR(拡張現実)・MR(複合現実)によって、遠く離れた場所のモノを眼前で再現することです。「飛行機工場では、エンジン整備のためにエンジニアが現場に行き、補修箇所を確認しなければなりません。しかし今は現場に行く必要はありません。デジタルプレイスの技術で、会議室でもどこでも、実寸エンジンを再現できるからです」とデモを見せていただきました。VR・ARによって遠くにある機械をこちらに運んだり、こっちから遠くの設備を見に行ったり。まるでアニメの『どこにでもドア』を使っているかのようでした。

他にも、製品や製造プロセスのデータを収集し、サイバー空間上に現実世界の状況を再現する『デジタルツイン』の事例や、ユーザから要求された情報を提供するだけでなく、ニーズを先回りして指摘してくれる『デジタルアシスタント』の事例などを通して、DXの時代はもう間近だと実感させていただきました。

富士通(株)のエバンジェリスト・及川洋光氏。「エバンジェリスト」は技術やサービスについてわかりやすく伝える役目を担っています。

富士通(株)のエバンジェリスト・及川洋光氏。「エバンジェリスト」は技術やサービスについてわかりやすく伝える役目を担っています。

スクリーンに映っているのが、シンポジウム会場で再現された飛行機のエンジン。実寸サイズです。

スクリーンに映っているのが、シンポジウム会場で再現された飛行機のエンジン。実寸サイズです。

ICTが、地域の課題を解決するための力になる。
講演3. NTTドコモの地方創生の取り組みについて
株式会社NTTドコモ 法人ビジネス本部 第一法人営業部 地域協創・ICT推進室 室長
池田 健一郎 氏

ICTによる地域課題の解決に取り組むNTTドコモ。「農地をドローン撮影で解析して作物の生育状況を把握する"スマート農業"や、センサを搭載したブイで海水温や塩分濃度・クロロフィル濃度を測り、海苔や牡蠣の養殖に役立てる活動を行っています」と、一次産業分野でICT活用が拡大している状況を教えていただきました。

また、地域交通分野では、「過疎地域に住む高齢者にとって重要な交通手段である乗合バスの管理を、AIが行ったりしています。AIが効率の良い運行時間・ルートを割り出すことで、待ち時間の短縮や的確な乗降場所の設定につながり、利便性が飛躍的に向上しました」と、具体的な成果もご紹介いただきました。

今後、次世代の通信規格である5Gによってできることがさらに増えるため、高速・大容量・低遅延・多数接続といった特徴を利用した様々な試みが始まっているとのことでした。

(株)NTTドコモの法人ビジネス領域で、地域協創・ICT推進室の室長を務める池田健一郎氏。

(株)NTTドコモの法人ビジネス領域で、地域協創・ICT推進室の室長を務める池田健一郎氏。

5Gを活用し、地方学生が東京の学校で行われているダンスレッスンに、リアルタイムで参加している様子。

5Gを活用し、地方学生が東京の学校で行われているダンスレッスンに、リアルタイムで参加している様子。

社会そのものを新しくデザインしようという発想が不可欠。
講演4.  Society5.1の作り方
札幌市立大学 理事長・学長
中島 秀之 氏

中島氏は20年近く前から、情報社会の次には「人間社会」が到来することを予見されていました。その予見どおり、今日の日本は、Society5.0によって人間が豊かさを実感できる社会を実現しようと歩み始めています。

「Society5.0の"超スマート社会"は、"必要なモノやサービスを、必要な時に必要な質と量だけ提供される社会"です。AIなどの先端技術は、社会の様々なニーズに"きめ細やか、かつ効率的に対応する"ために存在する。AIは人間の与えたゴールに従って作業する"道具"であり、価値を決めるのは、あくまで人間の側なのです」と、AIに対する漠然とした不安を拭っていただきました。

その上で、ITやネットワークの目覚ましい進化に社会システムがついていけないと、超スマート社会は到来しない、と中島氏は警鐘を鳴らします。「旧態依然とした社会システムの一部をITに置き換えるだけでは、意味がありません。ITやネットワークは、社会の仕組みを根本から変えるほどの力を持っている、との認識に立ち、社会の仕組み自体を新しくデザインすることが大事。それによってSociety5.0は5.1へと力強く進む」と結ばれました。

札幌市立大学で理事長・学長を務める中島秀之氏。

札幌市立大学で理事長・学長を務める中島秀之氏。

Society5.1で実現可能なものとして、中島氏は「多数決に代わる社会的な意思決定システム」「直接民主制」「資本主義に代わるシェアリング経済」などを挙げられました。

Society5.1で実現可能なものとして、中島氏は「多数決に代わる社会的な意思決定システム」「直接民主制」「資本主義に代わるシェアリング経済」などを挙げられました。

重要なのは、まず"あるべき姿"を描くこと。

第2部では、先の講演者4名をパネラーに迎え、Society5.0をテーマとするパネルディスカッションが行われました。コーディネーターは、本学 情報学部・教授の林孝典です。

"Society5.0実現のための課題をどう考えるか" という問いかけに、「Society5.0はサイバー空間とフィジカル空間の融合が必須であり、最初からデジタルで物事を考える必要がある」と意見されました。一方で、「デジタル思考に慣れていない日本の動きは遅い。欧米や中国はデジタルで考え、どんどん実行に移す。失敗しても、後からアップデートすればいいと割り切っている」や、「"どこかが成功したらウチもやる"という姿勢では"世界初"など生まれるわけがない」と言ったマインドの変革が求められる意見も出されました。

"イノベーションや協創/共創を起こすために大切なことは" という問いかけには、「"あるべき姿"を描き出すこと。どんな社会にしたいか、社会にどう貢献したいのか、ビジョンを明確にすることが大事」、「テクノロジーは手段に過ぎない。重要なのは、その先にどんな豊かな社会が生まれるのか」、「起点は一人ひとりの好奇心。新しいものに触れたいという思いから、進歩は始まる」、「古い世代の人間が若い世代を従来の型にはめてはいけない。新しい技術や文化は若い世代の方が知っている。若い世代を自由にすることで、イノベーションは起こる」などの声があがりました。

シンポジウムを終え、コーディネーターを務めた林氏は、 「AI/IoT/5Gなど、最先端の技術ばかりに目を奪われがちですが、大事なのはHOWではなくWHAT。あるべき姿を描き、社会実装の試行錯誤を重ねるという、地道で泥臭い努力が必要だと再認識できました」と感想を語りました。来場された方々も、Society5.0が実現された社会を垣間見ることができたのではないでしょうか。

最後になりましたが、講師の皆様、来場者の方々を始め、本シンポジウム開催にあたりご協力いただいた全ての方々に厚く御礼申し上げます。

シンポジウムの様子。「

シンポジウムの様子。「"100%完璧でないとスタートできない"という日本社会にありがちなカルチャーを変えるべき」など意欲的な意見が出されました。

最も重要なのは「ありたい姿」を描くこと。この点でパネラーの意見は一致していました。

最も重要なのは「ありたい姿」を描くこと。この点でパネラーの意見は一致していました。

「本学でも人間中心の考え方を大切にして、基礎研究から社会実装まで一気通貫で見渡すことのできる人材を育てていきたい」と語る情報学部・教授の林孝典氏。

「本学でも人間中心の考え方を大切にして、基礎研究から社会実装まで一気通貫で見渡すことのできる人材を育てていきたい」と語る情報学部・教授の林孝典氏。

シンポジウムにご参加頂いたパネリストの方々。専門的な知見を、一般の人々にわかりやすく伝えて頂きました。

シンポジウムにご参加頂いたパネリストの方々。専門的な知見を、一般の人々にわかりやすく伝えて頂きました。

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