生体医工学科では、未来の病院を支える医療機器の研究を行っています。

研究成果を学会で発表
医療機器を安全に操作・管理するスペシャリスト、臨床工学技士の国家資格取得を目指す生体医工学科。学生たちは4年生になるとゼミで卒業研究に取り組み、その中でチームワーク、課題を発見して解決する力、患者さんの立場で考える力、自分の考えを伝える力など、医療の現場で必要な人間力も身につけていきます。今回、学会で発表を行った学生に、研究内容と発表の感想を聞きました。

〈渡邊ゼミ〉
発表者:男座香恋さん
テーマ「抜針後のシミュレータ研究・開発における基礎検討」
学会名:広島県臨床工学技士会学術大会・総会

抜針後の止血の練習ができる機器を研究・開発
医療機器の安全性を高める研究を行う渡邊ゼミ。男座さんは、未熟な止血技術によって医療事故が起こる危険性があることに着目し、医療従事者でない学生、在宅血液透析を行う患者さんや介助者が、適正な圧力と時間で止血が行えるよう練習するための止血シミュレータの研究・開発に取り組んでいます。学会では、止血シミュレータに搭載する感圧センサーの正確性を調べる実験を重ねた結果、圧力を正しく測定できたことを発表しました。

「発表後、"医療現場では、きちんと止血できるかどうかを考えて血液透析の針を刺す部位を選ぶことが重要視されているので、役に立つ研究だと思います"というコメントをいただいて、止血技術の重要性を再認識できました」と男座さん。

「発表後、"医療現場では、きちんと止血できるかどうかを考えて血液透析の針を刺す部位を選ぶことが重要視されているので、役に立つ研究だと思います"というコメントをいただいて、止血技術の重要性を再認識できました」と男座さん。

押す力が正常なときは青い光、異常なときは赤い光で知らせます。赤のとき、圧力が強すぎると低い音、弱すぎると高い音が鳴るなど、チームでアイデアを出し合って、誰もが使いやすい止血シミュレータの開発を目指しています。

押す力が正常なときは青い光、異常なときは赤い光で知らせます。赤のとき、圧力が強すぎると低い音、弱すぎると高い音が鳴るなど、チームでアイデアを出し合って、誰もが使いやすい止血シミュレータの開発を目指しています。

〈竹内ゼミ〉
発表者:楠見茉耶さん
テーマ「頸髄(けいずい)損傷者深部体温予測モデルのための体温モニタリングシステムの開発」
学会名:平成28年度電気学会 電子・情報・システム部門大会/学生ポスターセッション

頸髄損傷者の体温管理を支援する機器を研究・開発
医療に貢献する機器の開発を目指す竹内ゼミ。楠見さんは、頸髄の損傷によって体温の変化に気づきにくく、体温調節が困難な患者さんのために、深部体温の計測および気温・気圧・湿度による体温変化の予測を常時モニタリングできる体温予測・提示システムを研究・開発しています。常に体温を管理することで、低体温やうつ熱(※)の危険を防ぐことが主な目的です。
「この研究は兵庫県立大学が開発中の頸損者深部体温予測モデルに適用するためのデータを収集する『体温モニタリングシステム』を開発し、頸損傷者が常に携帯できるように小型化するのが私の研究です」と楠見さん。「来場者から、もっと小さい方がいいという意見や、室内の安静な状態で計測したデータしかないことに対して"動いているときのデータはないの?"という質問を受け、今後検討していきたいと思いました」。学会でたくさんの気づきを得た楠見さんは、早速、屋外で活動している状態のデータを取る準備を始めたそうです。
※うつ熱とは、周辺環境の変化により、熱が体内にこもっている状態のこと。

「学会は、資料作りで研究を見直すこと、発表を行い他の人から意見や質問をもらうことで、新たな課題や改善すべき点が発見できるとてもいい機会です」と楠見さん。

「学会は、資料作りで研究を見直すこと、発表を行い他の人から意見や質問をもらうことで、新たな課題や改善すべき点が発見できるとてもいい機会です」と楠見さん。

頸髄損傷者および介助者が常に体温を管理できる「体温モニタリングシステム」。画面の右側は耳と額で測った深部体温のグラフを、左側は外気温・気圧・湿度から計算した予測モデルの結果を色で表す計画です。

頸髄損傷者および介助者が常に体温を管理できる「体温モニタリングシステム」。画面の右側は耳と額で測った深部体温のグラフを、左側は外気温・気圧・湿度から計算した予測モデルの結果を色で表す計画です。

〈戸梶ゼミ〉
発表者:田中啓也君
テーマ「教育用人工呼吸器技術トレーニングシステムのための仮想患者モデルへのガス交換能導入の試み」
学会名:広島県臨床工学技士会学術大会・総会

発表者:三島千秋さん
テーマ「教育用人工呼吸器技術トレーニングシステムの開発-換気モードPSVの導入・血液ガスの再現とその妥当性の検討」
学会名:第4回日本シミュレーション医療教育学会学術大会

発表者:池田萌望さん
テーマ「教育用人工呼吸器技術トレーニングシステムを用いた基本技術習熟度評価法の構築と教育効果の検証」
学会名:第38回日本呼吸療法医学会学術集会

パソコンで人工呼吸器操作の練習ができるシステムを研究・開発
戸梶ゼミでは、医療機器技術をトレーニングするシステムの研究・開発を行っています。仮想患者モデルの充実を目指して、肺のガス交換能(酸素と二酸化炭素のやりとり)の要素を導入し、よりリアルな患者呼吸動態を再現するための数値モデルを構築した田中さん、その数値モデルをプログラミングして組み込むとともに自発呼吸がある場合の換気モードを追加した三島さん、基本技術習熟度評価法を構築してシステムの教育効果を検証した池田さんが、それぞれ発表を行いました。
「肺の膨らみやすさを表す肺コンプライアンスの正常値を調べるとき、資料によって正常値の範囲が違っていたのでとても苦労しました。多くの情報の中から、何が正しいのかを自分で見極めていく経験は、とてもいい勉強になりました」と田中君。
「自発呼吸の吸気に合わせた換気モードを追加できたので、今後もいろいろなモードを再現し、仮想患者モデルをもっと充実させることができるという自信を持ちました。ポスターセッションでも、換気モードを追加したことを重点的に説明しました」と三島さん。
「3年生に協力してもらい、本システムを用いたトレーニング前後の技術習熟度・理解度の違いを調べました。概ね有用性は確認できましたが、学会で医学部の先生から"得点が下がっている数名についてはどう思いますか?"と質問を受け、チェック項目にその原因があることに気付いたので、評価法を見直そうと思っています」と池田さん。
それぞれの役割分担を徹底し、力を合わせて開発に取り組んでいます。

「私自身が人工呼吸器の操作技術を高めたいと感じていたので、このようなトレーニングシステムがあればいいのではないかと思い、研究に取り組んできました」と田中君。

「私自身が人工呼吸器の操作技術を高めたいと感じていたので、このようなトレーニングシステムがあればいいのではないかと思い、研究に取り組んできました」と田中君。

「私以外は医師や看護師、医学部の先生ばかりの学会でした。教育のことも、臨床現場も分かっていらっしゃる医学部の先生が、私たちの研究に興味を持ってくださったのがうれしかったです」と池田さん。

「私以外は医師や看護師、医学部の先生ばかりの学会でした。教育のことも、臨床現場も分かっていらっしゃる医学部の先生が、私たちの研究に興味を持ってくださったのがうれしかったです」と池田さん。

「看護師さんから"臨床現場で患者さんにどのモードが合うか迷ったとき、このシステムで試せるといいですね"という意見をいただき、学生が練習する以外の使い方の可能性に気付くことができました」と三島さん。

「看護師さんから"臨床現場で患者さんにどのモードが合うか迷ったとき、このシステムで試せるといいですね"という意見をいただき、学生が練習する以外の使い方の可能性に気付くことができました」と三島さん。

コンピュータ内で仮想患者モデルと人工呼吸器モデルをつなぎ、実際の人工呼吸器の動作を再現したシステムを開発中。このシステムがあれば、パソコン一つで、患者さんの状態に応じた人工呼吸器の操作を練習することができます。

コンピュータ内で仮想患者モデルと人工呼吸器モデルをつなぎ、実際の人工呼吸器の動作を再現したシステムを開発中。このシステムがあれば、パソコン一つで、患者さんの状態に応じた人工呼吸器の操作を練習することができます。

「私自身、学生のときに学会発表で味わった達成感や意識の向上が、貴重な経験として今も心に残っています。だからこそ、ゼミ生に発表を薦めました。みんなが積極的に研究に取り組んでくれたのが嬉しかったですね」と戸梶先生。

「私自身、学生のときに学会発表で味わった達成感や意識の向上が、貴重な経験として今も心に残っています。だからこそ、ゼミ生に発表を薦めました。みんなが積極的に研究に取り組んでくれたのが嬉しかったですね」と戸梶先生。

社会に通用する学びを
積み重ねた研究の成果を発表する場である学会は、他の人の意見を聞くこと、違う角度から見た研究の価値や新たな課題に気付くこと、人との出会いなど、その経験の全てが力になります。生体医工学科では、国家試験合格のための学びはもちろん、医療技術の進歩のための地道な研究も併せて行っていきます。

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