
昨年秋に開かれた全国規模の学会および海外の学会で、情報工学科濱崎ゼミの学部生や大学院生が自身の研究を発表しました。その模様をお伝えします。
真空管特有の非線形特性が、アンプなどの電子楽器の出力に歪みを発生させることによって生まれる独特の音色。これまで感覚的にしか捉えられていなかった音色を科学的に解明し、その特性を正確に表現するための研究を行っている小幡さん。最新の研究成果や技術情報の交換などを通じて電子回路技術者の交流をはかる電子回路研究会で、研究成果を発表しました。
「広島の学会で発表した経験はありましたが、全国規模の学会の雰囲気は、やはり違いましたね。私以外の発表者は各大学の大学院生以上の先輩ばかりで緊張してしまい、思うような発表ができませんでした。もっと研究に打ち込んで発表の機会を増やしていこうと考えています」(小幡さん)
「真空管アンプというテーマがおもしろい」「今後の発展に期待している」と専門家から注目を集めました。
ゼミの先輩が構築した測定システムをグレードアップ。測定時間を1/2に短縮するプログラムを開発しました。さらに数値の信頼性を高め、研究の精度を上げています。
「全国レベルの学会の空気を味わったことで、先輩方に負けないように、もっとがんばろうと思いました」と小幡さん(広島県立広島国泰寺高等学校出身)
山根君は、タイの首都バンコクで開催された「Thailand-Japan Micro-wave Conference (タイ-日本合同マイクロ波研究会)」(電子情報通信学会主催)のポスターセッションに参加。災害防止や農地管理などに役立つさまざまな無線センサーを設置するにあたり、最適なネットワークを設計するための多様な条件下での電波の伝わり方の研究を発表しました。
「苦手な英語でしたが、伝えるためには気持ちを込めることが大切だということがよくわかりました。相手も一生懸命聞いて理解してくれることが嬉しかったですね。今回、初めて専門家の方々に二波モデルの測定結果を見ていただいくことができました。『これだけのデータを取ったのはすごい。大変貴重なデータだ』と褒めていただき、研究の意義を再認識することができました」(山根君)
英語での説明は大変でしたが「降雨状況でのデータをとってほしい」といったご意見をいただくなど、多くの収穫がありました。
実利用を考慮した無線装置で平地、水面、森の中といったさまざまな条件での実験を重ね、根気強くデータを蓄積しています。
「4年生で国際会議を経験できたことは大きなアドバンテージ。来年もまた参加したいと思っています」と山根君(山口県立下松高等学校出身)
香川君は、山根君と同じ「Thailand-Japan Micro-wave Conference(タイ-日本合同マイクロ波研究会)」(電子情報通信学会主催)のポスターセッションに参加。山根君の研究で得られたデータを用いて、センサーの最適な設置場所を示すアプリケーションをつくる研究を発表しました。
「無線の専門家から意見を聞くよい機会になりました。アプリの研究をマイクロ波研究会で発表する意味や、オリジナリティについての質問を受けたことで、単なる情報処理ではなく、物理の観点を持ちながらオリジナリティを持たせるという今後の課題を見つけたことが大きな収穫です。学会だけでなく、タイに行ったこと自体も大きな経験になりましたね。成長著しい国の勢いを肌で感じることができました」(香川君)
ポスターセッションの前に1人60秒のプレゼンテーションが行われました。「タイの学生は自信を持って発表していると感じ、見習いたいと思いました」と香川君。
マイクロ波の専門家の視点および国際的な視点での意見を聞けたことで、研究に新たな課題が見つかりました。
「今回のすばらしい経験を、後輩のみなさんにも伝えていきたいと思っています」と香川君(武田高等学校出身)
「学会で発表することは、人前で自信をもって話す力が身につくと同時に、自分の研究を客観的にみる機会にもなります」と、ゼミの濱崎先生は、学生に研究発表の場を積極的に提供しています。3人の学生は、今回の経験を通じて、先生の期待以上に多くのことを感じたようです。大きな成長のステップになったことは間違いありません。